ニッポンの夜明けは、近いでしょうか。
蟲話10 「サルを
◆ もうひとつのモチーフ
庚申講には、いろんなところで「サル」が出てくる。
というおはなしを、前回の蟲話「サルが
ちょうどその蟲話を書いているとき、ぼくは
うちの祭壇に祀られている掛け軸を眺めていて、ふと、
サルの下に二羽のニワトリが描かれているのに気づきました。
はてさて、ではニワトリは、
庚申講とどんなつながりがあるんだろう?
◆ 一つめの、もっともな理由
その一つめの答えは、調べるとわりと簡単に出てきました。
前回の蟲話にも出てきた、青面金剛という庚申の神さま、
この神使(お稲荷さんにとっての狐みたいなもの)が、
実はニワトリだったようなのです。
前回の蟲話で、青面金剛は山王権現から
神使のサルを引き継いだ、と述べましたが、
つまりニワトリは主人が出世したさい、
一番の家来の座を、サルに奪われていたのですね。
とはいっても、ニワトリも一応、古参の家来ではあるので、
青面金剛のいるところには、ちょこっと下のほうに
描かれているというわけです。
◆ 二つめの、もっともっともな理由
そんな"神さまがわの都合"みたいな理由のほかに、
もっと実際の庚申講に即した説も見つけました。
庚申講は基本的には、夜通し起きている行事ですが、
ある地域ではその終わりが、「ニワトリが鳴くまで」
と規定されていたのです。
ならばその地域の人々にとってニワトリの鳴き声は、
眠くてつらい庚申講の終わりを告げ、
人々を日常に戻してくれる、ひとつの区切りのような存在。
だからこそ下部にニワトリが現れてくるのだろう、
と、その説は述べています。
ほう、つまり当時の人々は
ニワトリの絵を見つつ、ニワトリを待ち望んだというわけか。
◆ そして三つめの、もっとももっともらしい(?)理由
それら二つの説を「なるほど」と思い、
ぼくは今いちど、掛け軸を眺めました。
と、そのとき、
もうひとつの理由がぼくの頭に浮かんだのです。
「あ、干支もだ」
そう、
子丑寅卯…の十二支の順番でも、
サル(申)の次にはニワトリ(酉)が来るのです。
あら、不思議。
◆ サルを
てなわけで、どの説が正しいとか、
そういう話はひとまず措くと、ニワトリは
・青面金剛の家来としてサルの下におり、
・庚「申」講の終わりを告げてくれるものであり、
・干支の順番でもサルの次にくるものである
となります。
普段目立たない下っ端ながら、
しっかり庚申講の幕を引き、
その後を担っていく、ニワトリ。
だとすればやはり、
ニワトリはサルを継ぐ大切な存在なんだ。
ううむ、サルだけじゃなく、
ニワトリもまた、あなどりがたし。
■
申の年である2004年も、あと4日ほどで終わりですね。
なにかと先行きが見え難い今日この頃ですが、
来年こそはサルを継いだニワトリが、
ニッポンの夜明けを告げてくれる、
と、ぼくはそんな期待をしているのです。
それではみなさま、よいお年を。
次の満月は、年明け一月二五日です。
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